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交通事故で整骨院に通いたい!知っておくべき注意点とは

監修記事

岡野 圭祐

理学療法士

交通事故で怪我を負ってしまったとき、整骨院の通院を考える人もいるでしょう。

しかし、まずは整形外科を受診する必要があります。被害者は保険会社に慰謝料を請求することができますが、正しい手順を踏まなければ支払いを拒否されてしまうことも。それでは、交通事故に遭ったときはどのように行動したら良いのでしょうか。

今回は、交通事故後の正しい通院の仕方を解説し、被害者側が不利にならないように行動ができる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。

整骨院に通院しても慰謝料は請求できる

交通事故の被害者が加害者側へ請求できる慰謝料は、入通院慰謝料後遺障害慰謝料死亡慰謝料の3種類に分けられています。

中でも入通院慰謝料は、整骨院に通院した期間に応じた金額を請求することができます。

入通院慰謝料を算定する基準も3種類に分けられており、適用される基準によって金額は異なります。

交通事故の慰謝料の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)

▲交通事故の慰謝料の3つの基準

自賠責保険基準

車やバイクの運転者に加入が義務付けられている、自賠責保険での補償です。交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としており、限度額は120万円までとされています。

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

自賠責基準での算定方法は、以下の2つを計算し、金額の少ない方が入通院慰謝料の金額になります。

4,300円×治療期間
あるいは
4,300円×実際に通院した日数×2

任意保険基準

損害賠償の金額が自賠責保険の限度額である120万円を上回った際、足りない部分を任意保険によりカバーすることができます。

ただし、自賠責保険とは違って加入が義務付けられているわけではありません。したがって、加害者は任意保険に加入していない場合もあります。

任意保険基準は、各保険会社ごとに基準が定められています。一概にいくら受け取ることが出来るとはいえませんが、自賠責保険基準で算定された金額よりは、同等か少し上回る程度といわれています。

弁護士基準

裁判所基準とも呼ばれる弁護士基準は、交通事故における過去の裁判例に基づいて金額が算定されます。3つの基準の中で最も高い金額になります。

弁護士に示談交渉を依頼することで、弁護士基準を適用することが出来ます。

交通事故の示談交渉とは交通事故の加害者と被害者が和解の為に行う話合いのこと

▲交通事故の示談交渉とは

弁護士基準での入通院慰謝料の相場は、以下の通りです。

通院期間 金額
1ヶ月 16~29万円
2ヶ月 31~57万円
3ヶ月 46~84万円
4ヶ月 57~105万円
5ヶ月 67~123万円
6ヶ月 76~139万円

関連記事慰謝料についての詳しい解説はこちら

交通事故で整骨院に通院する流れ

交通事故にあい、怪我を負った方の中で、病院だけではなく整骨院の施術を受けたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

整骨院の施術を受けることで症状の回復を目指せる場合もあるため、決して通院してはいけないというわけではありません。ただし、整骨院に通院する際は注意しなければいけないことがあります。

どのようなことに注意をするべきなのか、これから詳しく解説していきます。

先に整形外科へ通う

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

交通事故による怪我の治療費は、加害者側の保険会社へ請求することができます。

ただし、医学的観点から必要かつ相当な範囲と認められなければ、治療費の支払いを拒否されてしまう可能性があります。

治療費の請求を可能にするためには、医師が作成した診断書が必要です。しかし、整骨院は医療機関ではないため、診断書を発行することができません。したがって、まず最初に病院を受診しなければいけません。

整形外科などの医療機関は、レントゲンMRIなどの画像検査、神経学的検査を行うことが出来るため、交通事故と怪我の因果関係を医学的に証明することが出来ます。

物損事故で処理している場合は、まず警察に診断書を提出し、人身事故として扱ってもらうようにしましょう。物損事故として処理されてしまうと、怪我の治療に対する損害賠償を請求できなくなってしまいます。

物損事故から人身事故へ切り替える手順・流れ

▲物損事故から人身事故へ切り替える流れ

整骨院へ通う許可をもらう

整骨院で施術を希望する場合は、その旨を整形外科の受診時に医師へ伝えましょう。状態に対して、施術の必要性を判断してもらう必要があるからです。

医師から許可が降りたら保険会社へ連絡し、通院による施術費の支払いが可能であるのか確認をするようにしましょう。

交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

▲交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

仮に医師から整骨院への通院指示が受けられなかった場合は、「施術の必要性・合理性・相当性・有効性がある」といった条件を満たす必要があります。

並行して通院する

整骨院に通院したことで施術の効果が出てきたとしても、整形外科への定期的な通院も続けるようにしましょう。

むちうちの場合、整骨院の施術や整形外科の治療を受け続けても、痛みやしびれ、違和感などの症状が残ってしまう場合があります。症状が残ってしまった場合は、後遺障害の認定を受けることで損害賠償の金額が増額されることがあります。

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

後遺障害の認定を受けるための申請には、医師が作成する「後遺障害診断書」が必要になります。後遺障害診断書を作成してもらうには、「症状固定」まで整形外科へ通い続けなければいけません。

症状固定と時期

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

症状固定とは、一定期間の治療を行ったうえで、これ以上治療を続けても症状の改善を見込めないと、医師が判断する状態です。

症状固定と判断された後も、残っている症状は後遺障害として扱うことになります。その場合、後遺障害等級認定の申請を検討しましょう。

怪我が改善する早さには個人差がありますが、一般的に症状固定とされる時期は以下の通りとされています。

  • むちうち:3ヶ月程度~
  • 骨折:6ヶ月程度~
  • 顔などに傷が残った場合の症状固定:数ヶ月~数年
  • 高次機能障害:数ヶ月~数年

関連記事交通事故で起こりやすい怪我とは|通院先や損害賠償請求も解説!

整骨院の治療費打ち切りは延長できる

加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたらどうする?

▲加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたらどうする?

整骨院などの通院で生じる施術費は、加害者側の保険会社が治療費として負担してくれています。しかし、「施術を続けても改善が見込め無さそう」「立て替えている治療費の支払いを抑えたい」などの理由で打ち切りを打診されることも。

保険会社から打ち切りの話を出されたとしても、医師の診察で治療が必要だと判断された場合は延長することが可能です。どうしても打ち切りを避けられなかったとしても、症状固定に至るまで通院を継続し、後から慰謝料を請求することもできます。

そもそも交通事故の慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる金銭的な補償であり、通院が必要な状態で打ち切られるべきではありません。保険会社や主治医とよく相談するようにしましょう。

交通事故で整骨院に通う際の注意点

交通事故で負った怪我を改善させるために、整骨院への通院を希望する人もいるでしょう。しかし、通院をする際に注意しなければいけないことがあります。

ここでは、どのようなことに注意するべきなのか解説していきます。

整体院・カイロプラティックは賠償対象外

交通事故後の症状に対する施術法はさまざまであり、受けられるのは整形外科や整骨院だけではありません

しかし、注意をしなければいけないのは「整体院・カイロプラクティックは賠償対象外」であることです。整体院・カイロプラクティックは医療類似行為に過ぎず、法律に基づいたものではありません。

さらに、医療国家資格を有していなくても、技術があれば誰にでもできる非公認の医療行為であるため、保険会社から治療費を支払ってもらえないので注意が必要です。

定期的な通院が必要

交通事故によるむちうち等の症状で整形外科と整骨院を併用通院した期間

▲交通事故によるむちうち等の症状で通院した期間の集計結果

画像評価で異常所見がない慢性症状は整骨院で施術を受けることが多いですが、1〜2回の通院で改善することは難しいです。

例えば、むちうちであれば1〜3ヶ月というように、症状によって通院の目安があります。整形外科の受診で治療の必要性があると判断されているうちは、定期的に通院をしましょう。

しかし、頻度が多過ぎる場合や想定される期間を延長して通院を続けてしまうと、保険会社から「不必要な治療を続けている」と判断されて治療費を打ち切られてしまう可能性があります。

整形外科とは明確な違いがある

交通事故通院における整形外科と整骨院の治療内容の違い

▲交通事故通院の病院と整骨院の治療内容の違い

整骨院と整形外科は明確な違いがあり、通院の仕方によってはデメリットを生じることがあります。整骨院では医師が不在のため、画像評価ができずに正確な診断がつかない場合があります。

また、診断書や後遺障害診断書を作成できるのは医師のみであり、整骨院では施術費の支払いや後遺障害認定の申請に必要な書類が用意できません。

定期的な医師の受診がなければ治療経過が分からず、保険会社は「症状が改善しているのに通院を続けているのではないか」と疑いを持ち、治療費の支払いを拒否してしまう可能性があります。

交通事故で整骨院に通う際のポイント

交通事故で負った怪我に対して、整骨院の通院を選択した場合にはいくつか注意しなければいけないことがあります。

ここでは、整骨院に通う際のポイントについて解説していきます。

交通事故に特化した整骨院に通う

数多く存在する整骨院の中でも、交通事故の対応に特化した整骨院に通われることをおすすめします。

通院する整骨院を選ぶ際は、以下の3つのポイントに注目しながら探してみてください。

  • 医療機関と提携している
  • 施術は手技だけでなく、最新機器も用いている
  • 交通事故の被害者が多く通っている実績がある

自賠責保険の範囲内で施術を受ける

交通事故で通院をする場合は、自賠責保険を利用して保険会社より保険金が支払われますが、傷害における上限は120万円と決まっています。

筋挫傷やむちうちなどが重症であり、長期間の通院が必要な場合では多額の治療費が発生するでしょう。

補償内容は「治療費」だけでなく、「通院交通費・診断書の作成費・慰謝料・入院期間があれば看護料」も含まれるため、入通院で発生している金額を把握しておく必要があります。

施術後の領収書は保管する

整骨院で施術を受けた後は、領収書を保管しましょう。

領収書は施術を受けて生じる施術費の支払いを証明する書類になるため、交通事故により保険会社へ請求するときに必要です。領収書がなければ通院を証明できず、保険会社から治療費の支払いを拒否されてしまうことも。

領収書を紛失してしまった場合は整骨院に相談をしましょう。再発行は不正使用防止のため難しいかもしれませんが、場合によっては支払証明書などを発行することができる可能性があります。

交通事故で整骨院に通っても残る後遺障害

通院を続けても症状が改善されず、後遺症が残ってしまうこともあるでしょう。後遺症のうち、後遺障害等級を申請して認定されたものを後遺障害と呼び、交通事故の補償の対象になります。

申請には医師が作成する後遺障害診断書が必要です。

後遺障害診断書とは?

▲後遺障害診断書とは?

関連記事追突事故の怪我で通院することに…通院期間と慰謝料の関係を解説!

まとめ

交通事故で負った怪我を改善させるために、整骨院に通院することは可能です。整骨院に通院していても保険会社に治療費を請求することはできますが、まずは整形外科を受診し、医師の許可を得る必要があります。

整形外科は医師が在籍しているため、精密機器による画像評価や診断書を作成することが可能です。

整骨院ではこれらの書類を用意できないため、保険会社は「不必要な施術を続けているのではないか」と過剰請求を疑い、治療費の支払いを拒否してしまうことがあるので注意しましょう。

また、整体院などは医療類似行為に該当し、賠償の対象外になります。基本は整形外科や整骨院を定期的に通院し、診断書や領収書を用意して適切な治療費を受け取ってくださいね。

この記事を監修したのは…

理学療法士として、大学病院、総合病院に務め、急性期や外来整形患者を担当。臨床業務の他にロボット開発、リーダー活動、勉強会開催などを経験。理学療法士としての可能性を広げるため、ライターとしても活動中。

この記事の執筆者

理学療法士 / 岡野 圭祐
理学療法士として、大学病院、急性期総合病院に務め、急性期や外来整形患者を担当。 臨床業務の他にロボット開発、リーダー活動、勉強会開催など多岐にわたる経験がある。 理学療法士としての可能性を広げるため、ライター活動も行っている。

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