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駐車場の事故は交通事故にならない?保険が適用できるケースや重要な過失割合の算出について解説

監修記事

鍋谷 萌子

ビジネス実務法務検定3級

駐車場での事故は、交通事故として扱われないため、原則として自動車保険の対象外です。しかし、大型ショッピングセンターなど、大勢の人が出入りする場所での事故は、道路交通法が適用される場合もあります。

本記事では、駐車場での事故について解説します。保険が適用されるケースや過失割合の算出方法、よくあるトラブルにも触れるため、ぜひ最後までご一読ください。

駐車場内では交通事故扱いにならないケースがある

駐車場内では交通事故扱いにならないケースがある

交通事故のうち、4分の1は駐車場で発生します。しかし、駐車場での事故は「交通事故」として扱われず、原則として自動車保険の対象外です。

これは道路交通法で、「道路における車両等の交通に起因する人の死傷、または器物の損壊」と規定されており、私有地で発生した事故は「対象外」とされているためです。

では、駐車場で発生した事故に保険は適用されるのでしょうか。

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駐車場内の事故に保険は適用される?

駐車場内の事故に保険は適用される?

上記の文書では、「原則として駐車場での事故は保険対象とならない」と述べました。ただし、例外も存在します。駐車場での事故がどのような扱いになるかは、ケースによって異なることもあるため、一例として参考にしてください。

保険が適用されるケース

以前に述べたように、駐車場での事故は基本的に交通事故として扱われません。ただし、大規模なショッピングセンターのような人通りの多い場所で起きた事故は、道路交通法が適用されることもあります。

最初に警察に連絡して、状況を確認してもらいます。警察が確認した情報に基づき、自動車安全センターが「交通事故証明書」を発行します。これにより、任意保険または自賠責保険に加入できます。

保険が適用されないケース

たとえば、「自宅の駐車場で家族同士が起こした車両事故」や「月極駐車場で契約者同士の事故」などの場合、保険を適用しないことがあります。

この場合、「人身事故証明書入手不能理由書」が必要になることもあります。これは、「なんらかの理由(ここでは『公道以外での事故』)があって、人身事故扱いとするための交通事故証明書が手に入らない」ということを証明するための書類です。

繰り返しとはなりますが、駐車場での事故がどのように扱われるかは、ケースによって異なるため注意してください。

相手自動車が無保険だった場合の補償はどうなる?

交通事故であると認められ、かつ過失割合が小さいと判断された場合、相手の自動車保険から補償が行われます。

しかし相手が保険に加入していなかったり、支払い能力がなかったりする場合は、自分の保険会社を利用して対応しなければならないこともよくあります。

駐車場内で起こりやすい事故・トラブル

駐車場内で起こりやすい事故・トラブル

ここからは、駐車場で起こりやすい事故・トラブルについて解説します。

  • ドアをぶつけてしまう「ドアパンチ」
  • 出庫時の衝突事故
  • バック走行中の事故
  • 駐車場内での当て逃げ

ドアをぶつけてしまう「ドアパンチ」

「ドアパンチ」とは、ドアを開けた際に隣の車に当たって傷つけてしまうことを指します。自分がこの被害者となった場合、「へこみはあるけれど、だれがやったのかわからない……」という状況に陥ることがあります。

この場合は警察を呼び、交通事故証明書を作成してもらいましょう。可能性は非常に低いですが、加害者が現れた場合は損害を補償してもらえます。

また、自分が加害者となった場合は、すぐに相手に謝罪し、警察に連絡しましょう。

出庫時の衝突事故

出庫時の衝突事故は、非常によくあるものです。前方不注意で左右から来ている車に気づかずぶつかってしまうケースや、歩行者が突然走ってくるケースなどがあります。

車同士の場合はスピードが出ていないこともあり、大きな事故になりにくいですが、歩行者(特に子ども)の場合は大きな事故になりかねないので、注意が必要です。

バック走行中の事故

「車を停めるためにバックをしていたら、ほかの車にぶつかってしまった」「自分が運転しているときに、バックしてきた車にぶつけられた」という事故はよくあります。

しかし、一口に「バック走行中の事故」といっても、「どのような状況で事故が起きたか」によって過失の割合が大きく異なります。被害者が歩行者や自転車だった場合は、車の過失割合が著しく高くなります。

また、相手が子どもなどの場合は、ケースによっては「車の過失100パーセント」と判断されることもあります。人的な被害がない場合でも、壁などにこすって物損事故を起こす可能性があります。特に死角の多い駐車場などでは、その危険が高まります。

駐車場内での当て逃げ

「当て逃げ」はよくある事故のひとつです。

もし自分が被害者になった場合、かつその場にいた場合は、相手の車種や色、そして何よりもナンバーをメモしておきましょう。その後で警察に連絡し、駐車場の管理者や保険会社にも連絡してください。

自分がいなかった場合は、駐車場の管理人に状況の確認をしましょう。できるだけ防犯カメラなどを確認して、加害者の情報を探ります。そして保険会社にも連絡してください。

もし「自分が人の車にぶつかってしまったけれど、中に人がいなかった」という場合は、警察と保険会社に連絡をしましょう。

POINT

当て逃げは行政処分や刑事処分の対象となる

人の車に当ててしまった場合でも、警察に連絡し、きちんと対応すれば行政処分刑事処分の対象から外れます。しかし、当てたうえで逃げた場合は、これらが課せられることになります。行政処分の場合は7点の減点があり、刑事処分では1年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金が科せられます。

物損事故と人身事故での対処の違い

物損事故と人身事故での対処の違い

物損事故と人身事故では、その対応方法に違いがあります。以下ではその違いについて解説します。

  • 物損事故と認定される内容と対処方法
  • 人身事故と認定される内容と対処方法

物損事故と認定される内容と対処方法

もし駐車場で物損事故を起こした場合、まずは警察に連絡しましょう。

その後、保険会社にも連絡してください。このようにすることで、保険金の支払いもスムーズに行われます。

人身事故と認定される内容と対処方法

駐車場での事故であったため、人身事故扱いとなり、『交通事故証明書』が入手できなかった」という場合があります。この場合、「人身事故証明書入手不能理由書」という書類が必要になります。この書類は、「なぜ交通事故証明書を入手できなかったか」を証明するためのものです。

この書類を発行してもらい、保険会社に提出することで、駐車場での事故でも、治療費や慰謝料を請求できます。

駐車場内での事故の過失割合は算出が難しい

駐車場内での事故の過失割合は算出が難しい

過失割合は、「その事故においてどれくらいの過失があったか」を評価するものです。この割合によって支払われる金額が変わってきます。一概に「このケースではこう」とは言えませんが、目安について紹介します。

交差点で発生した事故

出会いがしらの事故であり、双方に責任があると考えられるため、原則として責任は50:50となります。

しかし、車両同士の衝突に加え、歩行者との衝突事故も起こり得ます。この場合、過失割合は車側が高くなることが多いため、事故の際には十分な注意が必要です。

出庫している車と直進車の衝突事故

駐車していた車が出ようとしたときに、横から走ってきた車とぶつかった、という場合の過失割合は、出庫側70:直進者側30と判断されることが多いといえます。

これは、「直進者が優先される」という原則に基づくものです。

入庫している車と直進者の衝突事故

上で挙げたケースとは異なり、入庫時(バック時)には入庫側の責任がより重くなります。

多くのケースでは、「入庫している車80%:直進している車20%」と判断されます。

入庫している車と歩行者の事故

このようなケースでは、「車を入庫しようとしたら、後ろに人がいた」といった状況となります。この場合、過失割合は車が90%、人が10%とされることが多いです。

交通事故においては、車の方が人よりも強力であるため、人よりも過失割合が高くなることが一般的です。

通路進行中の車と歩行者の事故

「車が通路を運転中に歩行者と衝突した」ときの過失割合は、通常90:10です。ただし、相手が配慮を必要とする人(子どもや障がい者など)の場合は、さらに車の過失割合が高くなります。

ただし、駐車場でよくある「飛び出し」などの場合は、車の過失割合が減少します。

関連記事交通事故の物損事故から人身事故への切り替え方法|違いと処分・リスクも解説

まとめ

まとめ

「駐車場での事故」は、一般道路での事故とは異なる難しさを持っています。基本的には物損事故で処理されることが多いですが、例外もあります。

運転手として自分が関わった場合は、「物損事故で処理されるわけではなく、駐車場での事故でも人命を奪う可能性があること」に意識を向ける必要があります。

被害者となった場合は、「適切な対応をし、被害を補償してもらうこと」を考えなければなりません。

この記事を監修したのは…

交通事故関係、弁護士事務所・クリニック等でのコラム執筆を数多く経験。確かな情報収集力を元に、常に正しく信頼のおける情報を「誰であっても理解できるかたちで」わかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事の執筆者

ライター / 鍋谷 萌子
ビジネス法務検定資格取得者。赤本を元に交通事故関係の記事を多数作成してきました。弁護士事務所・クリニックなどでのコラム作成経験が非常に豊富です。確かな情報収集力を元に、常に正しく信頼のおける情報を「だれであっても理解できるかたちで」、分かりやすく丁寧に解説していきます。

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